令和7年度 税制改正(所得税)のポイント

こんにちは。マジシャンです。
令和6年12月20日、自公両党は令和7年度税制改正大綱を発表しました。その後与党が2月28日に国会に提出した修正案により、さらに年収に応じて基礎控除の額を加算する「令和7年分以後の基礎控除等の特例」が創設されることになりました。政府が国会に提出した当初の予算案が国会審議で修正されるのは、29年ぶりのことです。
今回は、これを含めた改正項目(所得税)のポイントを確認します。
1 生命保険料控除
子育て世帯への支援策として、生命保険料控除が拡充されることになっています。
具体的には、生命保険料控除における新生命保険料に係る一般生命保険料控除の控除額が、23歳未満の扶養親族を有する場合は、現行の4万円の適用限度額に2万円の上乗せ措置が講じられ6万円になります。
ただし、23歳未満の扶養親族を有しない場合は、現行と同様最大4万円となります。
なお、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除及び個人年金保険料控除の合計適用限度額は、現行と変わらず12万円から変更ありません。
23歳未満の扶養親族を有する場合の控除額は、次のとおりです。
年間の新生命保険料(a) 控除額
4万円以下 (a)の全額
4万円超6万円以下 (a)×1/2+1.5万円
6万円超12万円以下 (a)×1/4+3万円
12万円超 一律6万円
この改正は、令和8年分の所得税に限り適用されます。
2 退職所得控除の見直し
所得税では、一定期間内に複数の退職手当等を受け取る場合には、退職所得控除の原則と特例の調整規定が設けられています。
原則は、退職手当等を受取った年以前5年以内に他の退職手当等を受け取っていた場合において、勤続期間の一部が重複しているときは、勤続期間について重複排除をしたところで勤続年数を計算するというもので、特例は、確定拠出年金に係る老齢一時金にかかるもので、受給した年以前20年以内に他の退職手当等を受取った場合に重複排除規定が適用されるというものです。
令和7年の税制改正では、この特例が見直され、退職手当等の支払いを受ける年の前年以前9年内に老齢一時金を受け取っている場合に勤続年数の重複排除規定を適用するとされました。
また、退職者の源泉徴収票は、すべて(現行は役員のみ)税務署長等に提出しなければならないこととなります。
これらの取扱いは、令和8年1月1日以後の適用になります。
3 給与所得控除の見直し
給与所得控除は、55万円の最低保証額が65万円に引き上げられます。
4 特定親族特別控除の創設
就業調整対策の観点から、大学生年代の子等に係る新たな控除(特定親族扶養控除)が創設されます。
具体的には、19歳以上23歳未満の親族等(合計所得金額が123万円以下の者で、配偶者及び青色事業専従者等を除く)を有する個人(居住者)については、親族等の合計所得金額に応じた控除額が控除されます。
ただし、19歳以上23歳未満の親族等が扶養控除の対象となる控除対象扶養親族に該当する場合は対象から除外されます。
<親族等の合計所得金額> <控除額>
58万円超85万円以下 63万円
85万円超90万円以下 61万円
90万円超95万円以下 51万円
95万円超100万円以下 41万円
100万円超105万円以下 31万円
105万円超110万円以下 21万円
110万円超115万円以下 11万円
115万円超120万円以下 6万円
120万円超123万円以下 3万円
この改正は、令和7年分以後の所得税に適用(給与所得者については、令和7年分の年末調整において適用)されます。
5 基礎控除の見直し
今回の修正案では「基礎控除の特例」の創設と、所得税制度を抜本的に見直す方針が附則に追記されました。
(現行)
<納税者本人の合計所得金額> <基礎控除額>
2400万円以下 48万円
2400万円超2450万円以下 32万円
2450万円超2500万円以下 16万円
2500万円超 0円
(改正案・修正案)
<納税者本人の合計所得金額> <基礎控除額>
132万円以下 95万円
132万円超336万円以下 88万円
336万円超489万円以下 68万円
489万円超655万円以下 63万円
655万円超2350万円以下 58万円
2350万円超2400万円以下 48万円
2400万円超2450万円以下 32万円
2450万円超2500万円以下 16万円
2500万円超 0円
(注)上記の「132万円以下は基礎控除95万円」は恒久措置です。上記の「132万円超~655万円以下」の各基礎控除額は令和7年と令和8年のみの時限措置となり、令和9年分以降は一律58万円に減額となります。
これにより所得税の課税されない給与収入の上限は160万円になります。
6 配偶者控除・扶養控除の対象となる者の合計所得金額の引上げ
上記の基礎控除額の引上げに伴って所要の措置が取られます。
・配偶者控除対象者の合計所得金額 58万円以下
・扶養控除対象者の合計所得金額 58万円以下
・ひとり親控除対象者の生計を一にする子の総所得金額合計 58万円以下
・勤労学生控除対象者の合計所得金額 85万円以下
これにより一般的な扶養控除を受けるための該当者の給与収入の上限は123万円になります。
7 住宅ローン控除の見直し
(1)住宅ローン減税:以下のとおり、令和6年と同様の措置を引き続き実施。
・借入限度額について、子育て世帯・若者夫婦世帯(下記※)が令和7年に新築住宅等に入居する場合には、令和4・5年入居の場合の水準〔認定住宅:5,000万円、ZEH水準省エネ住宅:4,500万円、省エネ基準適合住宅:4,000万円〕を維持する。
※[1]年齢19歳未満の扶養親族を有する者
[2]年齢40歳未満であって配偶者を有する者又は年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する者が、住宅ローン減税の適用を受ける場合([1]又は[2]に該当するか否かについては、入居した年の12月31日時点の現況による)が対象となります。
・新築住宅の床面積要件を40㎡以上に緩和する措置(合計所得金額1,000万円以下の年分に限る。)について、建築確認の期限を令和7年12月31日(改正前:令和6年12月31日)に延長する。
(2)既存住宅の子育て対応リフォームに係る所得税の特例措置
・令和6年度税制改正において創設された子育て対応リフォーム税制について、令和7年も引き続き実施する。